畳にポツポツと緑や白、黒っぽい点々を見つけたら、それはほぼ「カビ」です。
結論からお伝えすると、畳のカビは「何色か」よりも「どんな畳に・どこまで広がっているか」で対処法を判断するのが正確です。
天然イ草・和紙畳・樹脂畳では水分やアルコールへの耐性が異なるため、まず自宅の畳の素材を確認したうえで、表面だけの軽い付着なのか、黒ずみや再発を繰り返す状態なのかを見極める必要があります。
慌てて濡れた雑巾でゴシゴシこすりたくなる気持ちはよく分かりますが、そのひと手間がかえってカビを広げてしまう原因になることもあります。
このページでは、畳にカビが生える理由から、畳の素材ごとの見極め方、状態に応じた安全な掃除の手順、そして生えにくい畳素材への切り替えまで、順を追って整理してご紹介します。
畳のカビの原因は?温度・湿度・養分をチェック
まず気になるのが「なぜうちの畳にカビが生えたのか」という点だと思います。
カビが繁殖するには、温度・湿度・酸素・養分・カビの胞子という条件がそろう必要があります。
このうち私たちが対策できるのは、温度・湿度・養分の3つです。
気温20〜30度がカビの活動域
カビは室温20〜30度で発生しやすくなるとされています。
梅雨入りの時期は気温がこの範囲に入りやすいため、一般的にカビが活発になりやすい季節だといわれています。
ただし油断は禁物で、気温5度程度からでもカビは発生しうるといわれており、冬場だからといって完全に安心できるわけではありません。
湿度60%を超えると要注意
湿度に関しては、80%を超えると発生し、60%を超えたあたりから活発になり始めるとされています。
こうした数値は、住宅メーカーや畳店が公開している住まいのお手入れ情報などで広く目安として紹介されているもので、あくまで一般的な傾向として捉えていただくとよいでしょう。
梅雨明けから秋にかけての数か月間は、湿度が高い状態が続きやすい時期にあたるため、特に注意が必要な期間だといえるでしょう。
畳の素材イ草が「吸ってためこむ」性質
昔ながらの畳表に使われているイ草には、湿気を吸収する性質があります。
適度な湿度なら室内を快適に保ってくれる頼もしい性質ですが、吸収した水分が飽和状態になると、その湿気がそのままカビの温床になってしまいます。
イ草はホコリも吸い込みやすく、これがカビの養分としてたまっていくこともポイントです。
なお、この「吸湿性の高さ」こそが、後述する畳素材ごとの対処法の違いにつながっていきます。
皮脂やホコリなどの「養分」
カビはキノコと同じ真菌の仲間で、たんぱく質や炭水化物を好みます。
裸足で歩くことで畳につく皮脂汚れや、食べこぼし、ホコリなどが、そのままカビの栄養源になってしまうのです。
新しい畳のカビ対策も忘れずに
意外に思われるかもしれませんが、新しい畳ほどイ草の調湿作用が強く働くため、水分を吸収しやすい傾向があるといわれています。
新調したばかりの畳ほど、こまめな換気と手入れを心がけたい理由はここにあります。
購入直後は特に、床に直接カーペットや布団を敷きっぱなしにしないなど、湿気をこもらせない使い方を意識するとよいでしょう。
カビが生えやすい部屋の特徴
- 日当たりや風通しが悪く、湿気がこもりやすい和室
- カーテンや布団など、他の場所からカビが移りやすい環境
- 掃除が行き届かず、汚れやホコリが蓄積している状態
- 気密性の高いマンションなど、空気が滞留しやすい構造
北向きに配置されがちな和室は、それだけで湿気がこもりやすい条件がそろってしまいます。
日中ずっと締め切っている部屋も、同じように注意が必要です。
寝室として布団を敷きっぱなしにしている場合も、寝汗が畳に吸収されてカビの原因になることがあります。
そのため、朝起きたら布団を上げて風を通す習慣を意識したいところです。
まず「何の畳か」を確認しよう|天然イ草・和紙畳・樹脂畳で対処法は変わる
畳のカビ対策で最初につまずきやすいのが、「畳ならどれも同じ手入れでいい」という思い込みです。
結論としては、掃除方法を選ぶ前に、まず自宅の畳が天然イ草か、和紙畳か、樹脂畳かを確認することが安全な対処の出発点になります。
同じ「畳」でも、水分・アルコール・ブラシへの耐性や、メーカーが案内するお手入れ方法はまったく異なります。
今の住宅にある畳の主なタイプ
- 天然イ草畳:昔ながらの畳表。吸湿性が高く、水分やこすり洗いに弱い傾向がある
- 和紙畳:和紙を樹脂でコーティングした畳表。撥水性が高く、水分に比較的強いとされる
- 樹脂畳:樹脂そのものを編み込んだ畳表。耐水性・耐候性が高いとされる
- 表面加工された畳:イ草にコーティングなどの加工を施したタイプで、通常のイ草畳と手入れ方法が異なる場合がある
- 古い畳/新しい畳:同じイ草畳でも経年劣化の度合いによって水分の吸い込みやすさが変わる
見た目だけでは判断がつきにくい場合もあるため、購入時の資料や、畳の縁(へり)付近に貼られている品質表示ラベル、施工した畳店の記録などを確認すると分かりやすくなります。
不明な場合は、無理に自己判断で薬剤を使わず、畳店やメーカーのお客様相談窓口に写真を送って確認する方法もあります。
畳の種類がわかったら「お手入れ方法」を必ず確認する
天然イ草・和紙畳・樹脂畳では、メーカーが推奨するお手入れ方法が異なる場合があります。
- 天然イ草畳:水分を極力避け、乾いたブラシ・乾拭き中心のお手入れが基本とされることが多い
- 和紙畳・樹脂畳:撥水加工がされているため、水拭きや中性洗剤の使用が案内されているケースもある
- 加工畳・コーティング畳:加工の種類によって薬剤の可否が変わるため、個別確認が必須
この段階を飛ばして「畳全般に効く掃除法」を一律に試してしまうと、素材によっては変色やコーティングの劣化につながるおそれがあります。
判定の流れを整理すると
カビを見つけたら、次の順番で確認していくと迷いにくくなります。
- カビを発見する
- 畳の素材を確認する(天然イ草/和紙畳/樹脂畳/不明)
- 表面だけの付着か、広範囲に広がっているかを確認する
- メーカーや施工した畳店のお手入れ方法を確認する
- 自宅で対応できる範囲か、畳店に相談すべき範囲かを判断する
以降の章でご紹介する掃除方法は、主に天然イ草畳を想定した一般的な手順です。
和紙畳・樹脂畳をお使いの場合は、この章の確認を優先し、メーカーの案内がある場合はそちらを最優先にしてください。
畳のカビの見分け方は?色より「状態」で見極めるのが正確
畳のカビというと、「青カビ・白カビは軽度、黒カビは重度」という色による分類がよく知られています。
ただし、色だけで軽度・重度を判断するのは、実は正確な見極め方とは言いにくい面があります。
というのも、カビの色は生えている場所の栄養状態や湿度、時間経過によっても変化するため、色イコール深刻度とは限らないためです。
そこで本記事では、色はあくまで参考情報として押さえつつ、「どこまで進行しているか」という状態を軸に判断することをおすすめします。
状態で見る5段階の目安
- 表面にうっすら付着:畳表の表面に粉状・点状のカビが薄く見える段階
- 黒ずみ・変色が残る:拭き取っても色素が沈着し、跡が残ってしまう段階
- 広範囲に広がっている:一畳のかなりの面積、または複数の畳にまたがって発生している段階
- 何度掃除しても再発する:同じ場所に繰り返しカビが生えてくる段階
- 畳表の奥・畳床まで疑われる:表面をきれいにしても臭いや湿り気が取れない、めくると裏側にも湿気やカビの気配がある段階
前半の2段階(表面にうっすら付着・黒ずみが残る程度)であれば、天然イ草畳を含め、自宅でのケアで対応できる可能性が比較的高いとされています。
一方で、広範囲・再発・畳床まで疑われる段階になると、自己判断でのDIY対応にはリスクが伴い、畳店やハウスクリーニング業者への相談を検討すべき段階だといえます。
参考情報としてのカビの色
色による見分けは判断の主軸にはしませんが、知っておくと状況把握の助けになる場合があります。
緑色に見えるカビの多くは、アオカビ属(ペニシリウム属)と呼ばれる種類で、パンや餅などの食品にも生えることがあるため見覚えのある方も多いかもしれません。
白くふわふわしているタイプは白カビと呼ばれ、畳だけでなく木材や壁、締め切った和室の柱や窓枠にも発生しやすいとされています。
黒く見えるタイプはクラドスポリウムという種類であることが多く、空気中に存在するカビの中でも特に数が多いとされ、お風呂やエアコンなど水気の多い場所でもよく見かけます。
いずれの色であっても、胞子は空気中を漂っているため、条件がそろえばどの色のカビも同じように繁殖・拡大する可能性がある点は共通しています。
「色が薄いから安心」とは言い切れない理由
青カビや白カビは「軽度だから安心」と思われがちですが、実はそうとも言い切れません。
これらのカビは湿気の少ない場所でも繁殖できる強さを持ち、菌糸が透明で目に見えにくいという特徴もあります。
つまり、色のついた点々が見えている時点で、すでにかなりの量の胞子が飛び始めている状態と考えられるのです。
さらに軽くてふわふわと空気中を漂うため、家具や衣類に付着して生息範囲を広げてしまうこともあります。
色の濃淡だけで「まだ軽いから」と後回しにせず、先ほどの5段階のどこにあるかで判断するのが安全だと筆者としては考えています。
畳のカビ掃除に必要な道具と共通の準備
掃除を始める前に、必要な道具と共通の準備を確認しておきましょう。
| 道具 | 用途 |
|---|---|
| マスク・手袋 | 胞子の吸い込みや薬剤による肌荒れを防ぐ |
| 乾いたブラシ(歯ブラシ可) | 畳の目に沿ってカビをかき出す |
| 乾いた雑巾を2枚以上 | 胞子を絡め取る乾拭き・仕上げ拭き用 |
| エタノール(消毒用) | 天然イ草畳の軽度なカビへの対応で使用 |
| 換気扇・除湿機 | 作業中と作業後の湿度を下げる |
まず和室の窓を開けたり換気扇を回したりして、部屋をしっかり換気します。
天気の悪い日にどうしても作業する場合は、除湿機を使って室内の湿度を下げてから始めるとよいでしょう。
次に、水分を使う前の段階として、乾いた畳の状態でカビの胞子をかき出しておきます。
ブラシで畳の目に沿って優しくなでるようにし、ゴシゴシこすらないことがポイントです。
胞子をかき出したら、乾いた雑巾で表面を乾拭きし、舞い上がった胞子を絡め取るイメージで拭き上げます。
なお、ここまでの準備は畳の素材を問わず共通ですが、この先の薬剤を使う工程は、前章で確認した畳の素材とお手入れ方法によって内容が変わってきます。
天然イ草畳・軽度なカビの掃除方法
ここからは、天然イ草畳で、状態としては「表面にうっすら付着」〜「黒ずみが少し残る」程度の軽度なカビを想定した掃除方法をご紹介します。
前提として、和紙畳・樹脂畳の場合はメーカーの案内を優先し、この章の手順をそのまま当てはめないようにしてください。
基本の考え方はシンプルで、水分を大量に加えず、弱い方法から段階的に試すことです。
代表的な手順として紹介されることが多いのが、エタノールを使う方法です。
1. カビの部分にエタノールを吹きかけ、20分ほど置く
2. アルコール成分が根元まで行き渡ったところで、再度エタノールを吹きかける
3. 畳の目に沿って歯ブラシで優しくかき出す
4. 使ったブラシはエタノールを入れたコップですすぎ、胞子を広げないようにする
5. 最後に別の乾いた雑巾で、畳の目に沿って乾拭きする
ここで一つ注意しておきたいのが、資料によって案内が分かれている点です。
お酢や重曹を使う方法を紹介している情報源もある一方で、「重曹水や酢は畳に染み込みやすく、かえってカビを増やす原因になりうる」として、畳にはエタノールのみを推奨する情報源もあります。
これはおそらく、畳表の織り方や加工の新旧、経年劣化の度合いによって、水分を含む洗浄剤との相性が変わってくるためではないかと考えられます。
こうした背景から、本記事では酢や重曹を使う具体的な手順(希釈の割合や分量)はあえてご紹介しません。
天然イ草の畳であっても、織り方や加工の種類によって水分との相性が異なるため、自己判断での使用は積極的には推奨せず、まずは畳店やメーカーのお手入れ案内を確認することを優先していただきたいと考えています。
判断に迷う場合は、いずれの方法であっても、まず目立たない隅で試してから本格的に使う「弱い方法から段階的に試す」姿勢が安全だと筆者は考えます。
いずれの方法でも、最後は必ず乾いた布で乾拭きし、畳に水分を残さないようにすることが共通のポイントです。
黒ずみ・広範囲のカビ|自宅対応の限界と畳店に相談すべきサイン
先ほどの5段階でいう「黒ずみ・変色が残る」「広範囲に広がっている」段階になると、自己判断だけで対応を続けるにはリスクが伴います。
結論としては、この段階に達している場合、無理に強い薬剤を使い続けるより、早めに畳店やハウスクリーニング業者へ相談することをおすすめします。
それでも自宅で試したいという場合は、次のように段階を踏んで、悪化させないことを最優先に進めてください。
1. カビの部分に直接エタノールを吹きかける
2. 畳の目に沿ってブラシで優しくこする
3. 乾いた布でしっかりと乾拭きし、水分を残さない
4. これで改善しない場合は、無理に薬剤を追加せず、範囲や色の濃さを写真で記録しておく
エタノールだけで改善しない場合に、重曹の粉を追加する方法が紹介されることもありますが、重曹自体に強い漂白効果はなく、水分を含みやすいという指摘もあるため、広範囲での使用にはおすすめしません。
漂白効果を目的とする場合は酸素系漂白剤など別の成分によるものだと整理しておくと、掃除方法を選ぶ際に迷いにくくなります。
ただし漂白剤のような強い薬剤を、素材確認や状態確認をせずに自己判断で広範囲に使うのは避けたい対応です。
次のような状態に一つでも当てはまる場合は、自宅での対応にこだわらず、専門家への相談を検討する段階だと考えられます。
- 何度掃除しても同じ場所にカビが再発する
- 拭き取っても黒ずみや変色が残る
- カビの範囲が畳一枚のかなりの面積に及んでいる
- 複数の畳にまたがってカビが見られる
広範囲のカビは、畳表だけでなく、畳の下の床板にまで湿気がたまっているサインである可能性もあるため、専門家に見てもらう方が安心です。
掃除しても臭いが取れない・繰り返し生える場合は「内部汚染」のサインかもしれません
カビを取り除けたように見えても、独特の臭いだけが残ってしまうことがあります。
結論からいうと、表面のカビを処理したのに臭いが取れない、あるいは短期間で同じ場所にカビが戻ってくる場合は、畳表の奥や畳床まで湿気・カビが達している可能性を疑う判断材料として受け止めることをおすすめします。
以前は、こうした臭い対策として重曹と酸素系漂白剤を混ぜたペーストを綿棒でピンポイントに塗る方法が紹介されることもありました。
ただし、酸素系漂白剤は素手で扱うと肌が荒れることがあるうえ、畳の変色につながるおそれもあり、そもそも臭いが取れない時点で表面処理だけでは対応しきれていない可能性が高いと考えられます。
そのため、臭いの根本原因が畳表の奥や畳床にある場合、漂白剤を自己判断で追加投入しても解決に至らないケースが少なくありません。
臭いが残っている、または再発を繰り返している場合の目安は次の通りです。
- 表面を掃除した直後は臭いが軽減するが、数日で元に戻る
- 畳をめくった際に湿った臭いや変色が見られる
- 同じ場所に何度も同じ色のカビが発生する
これらに当てはまる場合は、追加の薬剤を試すよりも先に、畳店やハウスクリーニング業者に状態を確認してもらうことを優先してください。
畳床まで湿気が達している場合、表面だけの処置では根本的な解決にならず、張り替えが必要になるケースもあります。
畳のカビ掃除でやってはいけないこと
良かれと思ってやっていることが、実はカビを悪化させてしまうケースもあります。
- 水拭きでゴシゴシこする:畳に水分を与えることになり、かえってカビの繁殖を助けてしまいます
- 掃除機で直接吸い取る:排気口からカビの胞子が室内に放出され、部屋全体に広がる可能性があります
- ポンポンと叩いて拭き取る:叩く動作でカビが畳の奥へ押し込まれ、除去しづらくなります
- 素材確認をせずに強い薬剤を使う:和紙畳・樹脂畳・加工畳では変色やコーティング劣化のおそれがあります
カビを見つけると反射的に掃除機をかけたくなりますが、これは避けたほうがよい方法として複数の情報源で共通して指摘されています。
かき出したカビは、ほうきや乾いたブラシ、乾拭きで丁寧に取り除くのが安全な進め方です。
畳のカビを未然に防ぐための対策と生えにくい畳選び
一度発生したカビへの対処法を知っておくことも大切ですが、そもそも生えにくい環境を作っておくことが一番の近道です。
- こまめな換気:天気のよい日は窓を開け、雨の日は除湿機やエアコンのドライ機能を活用する
- 湿度を上げない工夫:布団やカーペットを敷きっぱなしにせず、こまめに上げて乾燥させる
- こまめな掃除:ホコリや皮脂汚れなど、カビの養分となるものを掃除機や乾拭きで取り除く
- 防湿シートの活用:畳の下やカーペットとの間に敷き、湿気を吸わせて畳への吸湿を減らす
- 素材の見直し:撥水性のある和紙畳や樹脂畳など、カビが生えにくいとされる畳への切り替えを検討する
畳にカーペットやウッドカーペットを重ねている場合、湿気がこもりやすくなるため、時々めくって風を通すことも忘れないようにしたいポイントです。
水やジュースをこぼした際は、放置せずにすぐ拭き取り、可能であればドライヤーの冷風などで乾かしておくと安心です。
室内干しをする場合は、和室を避けるか、除湿機・換気扇と併用するなど、湿度が急に上がらないよう配慮するとよいでしょう。
畳の素材ごとの向き・不向き比較
| 畳の種類 | 水分への耐性 | お手入れの手間 | 価格傾向 |
|---|---|---|---|
| 天然イ草畳 | 弱い(水分を避けたケアが基本) | 比較的こまめな手入れが必要 | 比較的手頃 |
| 和紙畳 | 比較的強い(撥水加工) | 手入れの手間を減らしやすい | やや高め |
| 樹脂畳 | 強い(耐水・耐候性) | 手入れの手間を減らしやすい | やや高め |
「生えにくい畳」への切り替えも選択肢に
近年は、天然のイ草に代えて、和紙を樹脂でコーティングした「和紙畳表」や、樹脂そのものを編み込んだ「樹脂畳表」といった選択肢も広く流通しています。
これらは水分を吸収しにくい構造になっているため、カビやダニが発生しにくく、色あせしにくいことも特長として紹介されることが多い素材です。
一般的には、天然イ草の畳表に比べると価格はやや高めになる傾向がありますが、その分お手入れの手間を減らせるというメリットがあるとされています。
張り替えを検討する場合は、畳店やリフォーム会社に相談し、実際の生活スタイル(ペットの有無、小さなお子さんの有無、和室の使用頻度など)を伝えたうえで、素材ごとの特徴やおおよその費用感を確認するとよいでしょう。
価格や在庫、キャンペーン内容は時期や店舗によって変動するため、具体的な金額は各畳店・メーカーの最新情報で確認することをおすすめします。
畳のカビの根本原因と向き合い方|筆者の見解
ここからは、住まいケアに携わってきた立場からの、個人的な見解を述べたいと思います。
畳のカビというと「不衛生」「掃除不足」というイメージで語られがちですが、実際にはイ草という素材そのものが持つ「吸湿性の高さ」という長所が、裏目に出て起きる現象だと捉えるほうが実情に近いと筆者は考えています。
イ草は湿気を吸収するスピードが速い一方で、放出はゆっくりだといわれています。
この「吸うのは早いが出すのは遅い」という性質こそが、梅雨時期に畳がカビやすくなる根本的な理由なのだと思います。
つまり、畳のカビはお手入れの甘さだけを責めるべき問題ではなく、住まい全体の湿度管理のサインとして受け止めるべきものだと感じています。
畳にカビが見えているということは、住宅内の湿度がすでに高い状態にあると考えられます。
カーテンや布団、収納の中などにも同様のリスクが及んでいる可能性があるという点は、意識しておいて損はないでしょう。
また、今回改めて整理していて感じたのは、「カビの色で軽度・重度を判断する」という発想には限界があるということです。
色は繁殖してからの経過時間や周囲の環境によっても変わりうるもので、あくまで参考情報にとどめ、「表面だけか、黒ずみが残るか、再発するか、広範囲か、畳床まで疑われるか」という状態の進行度で見たほうが、実際の対応判断にはずっと役立つと筆者は考えています。
同じように重要だと感じるのが、「畳ならどれも同じ手入れでいい」という思い込みを見直すことです。
天然イ草・和紙畳・樹脂畳では水分やアルコールへの耐性がまったく異なるため、掃除方法を選ぶ前に、まず自宅の畳がどのタイプかを確認する習慣を持つことをおすすめしたいです。
また、掃除方法についてお酢や重曹を使うべきかエタノールのみにすべきか、情報源によって案内が分かれている点も、個人的には興味深いところです。
畳店やハウスクリーニングの現場からの情報を総合すると、こうした案内の違いは、畳表の織り方や加工の新旧によって水分の染み込みやすさが変わることが背景にあるのではないかと筆者は見ています。
加えて、経年劣化の度合いによっても、畳が水分をどこまで吸い込みやすいかが変わってくることも一因ではないかと考えられます。
だからこそ、いきなり広い範囲に薬剤を使うのではなく、まず素材とお手入れ方法を確認し、判断に迷う成分についてはメーカーや畳店の案内を優先するという、段階を踏んだ慎重な進め方をおすすめしたいのです。
今後については、和紙や樹脂を使った撥水性の高い畳表を選ぶ家庭が、これからさらに増えていくのではないかと見ています。
共働き世帯の増加やライフスタイルの変化により、畳の手入れにかけられる時間が限られている家庭は少なくありません。
そうした背景を踏まえると、「カビが生えてから頑張って落とす」発想から、「そもそも生えにくい素材を選ぶ」発想へと、少しずつシフトしていく流れは自然なことのように感じています。
なお、畳店や住宅メーカーへの相談は、カビが軽度なうちに寄せられることが多い傾向があると各社の情報で紹介されています。
このことからも、自己判断だけで抱え込まず、早めに専門知識を持つプロへ相談してみることは、遠回りに見えて実は近道になる場合が多いというのが、筆者としての率直な感想です。
よくある質問
畳のカビは色(青・白・黒)で軽度・重度を判断できますか?
色だけで判断するのはおすすめしません。
色は繁殖の経過や環境によって変わりうる参考情報にとどまるため、「表面にうっすら付着」「黒ずみが残る」「広範囲」「再発」「畳床まで疑われる」という状態の進行度で判断するほうが正確だとされています。
天然イ草畳・和紙畳・樹脂畳で掃除方法は違いますか?
はい、異なる場合があります。
天然イ草畳は水分を避けた乾拭き中心のケアが基本とされることが多い一方、和紙畳・樹脂畳は撥水加工により水拭きなどが案内されているケースもあります。
掃除を始める前に、まず自宅の畳の素材とメーカーの案内を確認することをおすすめします。
掃除してもカビの臭いが取れない場合はどうすればいいですか?
表面を掃除しても臭いが取れない、あるいは短期間で再発する場合は、畳表の奥や畳床まで湿気やカビが達している可能性があります。
追加の薬剤を自己判断で試すより先に、畳店やハウスクリーニング業者に状態を確認してもらうことを優先してください。
まとめ
畳のカビは、気温20〜30度・湿度60%以上・皮脂やホコリといった養分がそろうことで発生しやすくなります。
対処の第一歩は、色による軽度・重度の判断ではなく、自宅の畳が天然イ草・和紙畳・樹脂畳のどれかを確認することです。
そのうえで、「表面にうっすら付着」「黒ずみが残る」「広範囲」「再発する」「畳床まで疑われる」という状態の進行度に応じて、自宅で対応できる範囲か、畳店に相談すべき範囲かを見極めることが大切です。
水拭きや掃除機での吸い込み、叩いての拭き取りは避け、乾いた状態でのブラッシングとエタノールを中心にした乾拭きが天然イ草畳の軽度なカビへの基本の手順です。
酢や重曹を紹介する情報もありますが、畳の素材・加工によって相性が異なるため、本記事では自己判断での使用を積極的には推奨せず、メーカー・畳店の案内を優先することをおすすめします。
臭いが取れない、何度も再発するといったサインが見られる場合は、無理に薬剤を追加せず、畳店やハウスクリーニング業者への相談を優先してください。
そのうえで、換気・除湿・こまめな掃除・防湿シート、そして必要に応じて和紙畳や樹脂畳への切り替えといった予防策を続けることが、カビを繰り返さないための一番の近道だと思います。
無理に一気に済ませようとせず、まずは自宅の畳の素材と状態を確認しながら、ご自宅に合った方法を見つけていただければと思います。


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